今、業務を提供している会社でイスラエルのベンチャー企業との協業について話し合いを進めています。
で、来週、イスラエル企業が日本に来るのですが、この約1ヶ月間、いま世界的に注目されているイスラエルのスタートアップ企業について、いろいろ情報収集を行なってきました。
今後、日本企業が成長の活路を見出す場合、おそらくシリコンバレー以上に注目すべきなのがイスラエルではないかと個人的に感じています。
そこで、この1ヶ月間の活動の中で得た情報の内、シェア可能な情報をまとめてみたいと思います。
シリコンバレー以上に熱い、スタートアップベンチャーがいっぱいのイスラエル
2017年8月からAIに事業軸を移したことをキッカケに、4月からAIビジネスのプロデュース案件に関わっています。
いろいろな技術検証(PoC)をしつつ、実践展開できそうなビジネスを探していましたが、現状の延長上に視点を置いているとどうしても大義あるビジネスプランが描けません。
- 今、社会はどんな課題を抱えているのか?
- その課題を解決できる方法は何か?
- その方法は最先端すぎておらず、でも参入障壁がそれなりに高く、人生を賭ける価値のあるビジネスプランが描けるものか・・・
AIに限らず、私はこんな観点から最初の大雑把なビジネス企画を組み立てるのですが、なかなか描けないながらも以前から思っていた非効率な事業分野にAIを投じたサービスを作れないかと思っていました。
そんな思いを抱いて引き寄せてしまったのか、そう思った翌日に参加したイスラエル大使館主催のベンチャー企業ピッチで、ビビッと来る会社に出会ってしまったんです。
その企業名やどんなビジネスプランなのかは今明かすことができませんが、私はそのピッチ(プレゼン)と、その会社のホームページに掲載されているサービスイメージの動画を見た時、「これだよこれ!昨日、プロジェクトメンバーに話した課題解決策はこれだよ!」と一緒にきていたクライアントさんに話してしまいました。
イスラエル・スタートアップの魅力はテクノロジーよりもサイエンス
イスラエルのスタートアップが実は今、世界で一番ベンチャーキャピタル資金を集めている(絶対額ではシリコンバレーが大きいけど、1企業あたりになるとイスラエルスタートアップが1位)ということが、後述の参考図書に書かれています。
私が参加したピッチの内容や、本で紹介されているイスラエル企業やアメリカ企業の中でのイスラエル人の活躍分野を見ていると、その最大の理由はイスラエルスタートアップはテクノロジーが優れているというよりもサイエンスが優れているからということができると思います。(もちろん、テクノロジーが優れていることは言うまでもありませんよ)
私が来週、打ち合わせを行うイスラエル企業もそうですが、元気なイスラエルスタートアップの商品はかなり高度な数学や医学、心理学や認知科学など、簡単には真似できないサイエンスがバックグラウンドにある会社が多いように思います。
特徴ある製品・サービスを作っている会社だな〜と思うと、イスラエル工科大学(テクニオン)やテルアビブ大学など世界トップランクの研究機関の教授陣たちがしっかりサポートしているんです。
全てのイスラエルスタートアップを見たわけではありませんが、大使館主催のピッチで聞いた7社については全てこのような独自のサイエンス理論を製品化しているところに特徴がありました。
ビジネスの根幹はサイエンス
アメリカ企業はサイエンスは凄いけど、それを商品化するテクノロジーが今ひとつ。
日本企業はサイエンスは今ひとつ(あるいはアメリカのコピー)だけど、それを商品化するテクノロジーがすごい。
今ではこの図式は成り立ちそうもありませんが、私が大学生だった、日本式経営がもてはやされたころは、当時先端を行く日米の製造業にそんなイメージの違いがあったのを覚えています。
この図式に習えば、イスラエルスタートアップはサイエンスがすごくて、それを商品化するテクノロジーもすごいということになるでしょうか。。。
ただし、アメリカや日本のような大国ではありませんから、得意分野を絞っているという感じです。(戦争・マーケティングの基本ですね)
どんな分野かというと、画像処理、脳科学(医学、心理学も含む)、IoT(ソフトウェア制御されるハードウェア)、農業でしょうか。
そして、サイエンスとしてはそれら全ての基礎にある数学や物理学です。
儲かりやすいかどうかというと、ユニークで画期的(ディスラプティブ disruptive)なサイエンスであればあるほど売り上げを立てるのは難しいでしょう。
でも、今まで不可能だったことが可能になるというある種の魔法を起こすことが可能なので、化ければ大きい、まさにベンチャーなんだと思います。
イスラエルのスタートアップを研究する際は、このサイエンスのユニークさに着眼するのが面白いと思います。
やっぱり無視できない軍需技術の民需転換
そんな、ユニークなサイエンスが実戦投入される場は、やはり軍事において他なりません。
もう、だいぶ昔になりますが、あるIT系のイベントの基調講演をされた当時富士通の会長さんが「日本は軍需技術の開発をしてないから、なかなか技術力が上がらない。やっぱり軍需技術の開発というのはとっても大事だ」という主旨のことを言われたことを鮮明に覚えています。
そんな、軍需テクノロジーの成功事例にあふれているのもイスラエルが注目を浴びている理由であることは誰しも納得行くことでしょう。
今回、イスラエルのスタートアップ企業と話していると、彼らは決して自ら口にすることはないのですが、中に有名な8200部隊出身者がいるようですし、採用している技術やその応用例を聞いていると、きっとイスラエル国防軍が採用しているんだろうな・・・と感じさせる技術(あるいは考え方)に溢れています。
そう、イスラエルは皆兵国家ですから、私が話している彼ら彼女らはかつて何処かの戦線で役務に服していたことがあり、その時に接した最先端テクノロジーを退役後の経済活動の中で生かしているという訳です。
日本企業の軍需技術開発はなかなか難しいところがあるでしょうが、現在、安倍政権がイスラエルと「日・イスラエル・イノベーション・ネットワーク(Japan Israel Innovation Network : JIIN)」を進めているということなので、イスラエルで実戦投入されているテクノロジーをよく理解し、利用できるところをパートナーシップを持って活用できるよう体制を構築するのが、これからの日本企業の競争力につながると思います。
参考1:日・イスラエル・イノベーション・ネットワーク(Japan Israel Innovation Network : JIIN)
日・イスラエル・イノベーション・ネットワーク(Japan Israel Innovation Network : JIIN)
参考2:イスラエルの次世代テクノロジーを生む「9900部隊」出身者たち(Forbes Japanより)
ということで、来週、イスラエル企業とVRとAIを活用したビジネス企画についての打ち合わせを行います。
シェアできる内容については、また、このブログで報告します!
また、もしイスラエル企業との取引を考えたいという方がいらっしゃいましたら、私が得た知識や体験した事柄について個別にお話ししても構いません。
個人的には、イスラエルの事例は日本の企業の参考になるだけでなく、地方再生にも役立つ示唆が多いと思っています。
人口800万人という小さな国家なのに、世界で1番と言っても良いぐらい投資資金を集めている理由。
この辺についてもいずれ書いてみたいと思ってます!
追伸:イスラエルのスタートアップ企業と会話を交わす前に、必ず読んでおくべき3冊
必須本1. 知的国家 イスラエル(文春新書)
私も以前いた三井物産出身の方が書かれた書籍。現時点で、一番新しい、イスラエルスタートアップについて書かれた本だと思います。
新書ということでボリューム的に程よい感じですが、イスラエルの建国時の苦労から、世界で一番投資資金を集めることに成功している現在までの大雑把な歴史もつかむことができます。
また、筆者の個人的な知り合いの事例が書かれているので、実際にイスラエルのスタートアップ企業と商談をしようとする方にリアリティのある示唆が多い必須本です。
必須本2. アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?(ダイヤモンド社)
この本は2012年の発刊と、他の2冊に比してちょっと古い感じですが、中身はアメリカ企業がイスラエルをどの様に活用しているかという実例に溢れています。
アメリカ人が書いた書籍なので、アメリカ人の書籍にありがちな「何でこんなに分厚くなるの?」という冗長なところもあるのですが、情報量は多く、得られる示唆も多いです。
この本は、スタートアップ企業に特化しているわけではなく、おそらく大企業には欠かせない、技術的優位を得るための示唆に溢れていると感じました。
分量が多いので急ぎの場合は読まなくても大丈夫ですが、読まないことによって得られない知識は勿体無いので、本気でビジネスをする方ならば目を通しておくべき書籍だと思います。
必須本3. スタートアップ大国イスラエルの秘密 (洋泉社、単行本)
この本は、上の「アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?」を踏まえ、各種情報を新しくしつつ、スタートアップにより焦点を当てた書籍です。
3冊の中で一番レポートを書くための資料にしやすい書籍だと思います。
イスラエルのスタートアップとの取引について社内の決裁書類(稟議書など)を書かなければならない方は必見です!